丁寧に丁寧に進めてきた、TIERのご祝儀袋リニューアル。
ようやく皆さまにお披露目できる日がきました。
TIERの考えるスタンダードは、毎回使いたいシンプルで本当に良いモノ。
和紙に包んで「相手に贈る」ことの本来の意味を考え、
今の時代に合わせた「贈る」を大切に心がけました。
まずは祝儀袋の大部分の紙、和紙について考えました。
和紙って聞くとなんだかよくわからないけど高級な紙に感じませんか?
拙著『日本水引』でも触れましたが和紙には、実は定義がない・・・
和紙と言ってしまえば和紙となってしまう現状・・
私も驚きましたが、例えば、木材のパルプや、葉の繊維であるマニラ麻などを
機械で漉いて和紙に似せた洋紙でも和紙だと言えてしまうのが実情で、
現在私たちが目にする和紙と言われる約95%以上は、そのような紙のようです。
このことを私が良いも悪いも言うつもりはありませんが、
「えっ、知らなかった。
お世話になったからちゃんとした良いモノで贈りたいと思っていたのに」
となる前に、まずは知ることできちんと分かって選ぶことが大切だと思うのです。
私が思う本来の和紙は楮、三椏、雁皮などの靭皮繊維を原料に用いて
手漉きでつくる日本古来の紙です。このような貴重な和紙は、
高価で数パーセントしか出回っていないので当然私たちは目にする機会が
ほとんどありませんでした。
そこで、私は今回リニューアルするにあたり、国内で大切に栽培され育てられた
希少な国産楮のみ、手漉きでいちまい一枚すべて特別にあつらえていただく
ことにこだわりました。
今の時代、昔のような良い素材の入手はなかなか難しい・・・
手間を惜しまずに作られている「これこそ和紙」を多くの方に知っていただきたい、
みなさんに使っていただきたい思いの丈を和紙職人の谷野裕子さんにお伝えし、
ご理解とご協力をいただけたからこそ今回実現することができました。
細かい部分を何度もやり取りを重ねながら、
豊かな繊維質であることを目と手で確認できる谷野さんの和紙は優しく、
古来と現代の日本を行き来するような気持ちになります。
たおやかな雰囲気の中にも凛とした品格がある短冊の文字は、
書道家 中村ふくさんにお願いし、納得のいくまで微調整を何度も重ねてきた
自信作です。
そして熨斗(のし)。
昨今デザイン重視で本来の意味が抜け落ちているように感じることから、
再認識するためにも愚直に取り組み「鮑熨斗」と「麻熨斗」2種類の熨斗をつくりました。
元来、神様に捧げる贈り物として貴重品であった鮑がやがて贈り物の主役となり熨斗となります。
古代より「御食国(みけつくに)」として山海の食べものを朝廷に献じてきた淡路島。
淡路島産の本物の鮑(あわび)を今回の為に漁師さんに採っていただき伸した貴重な熨斗鮑です。
もう一種は、古代より神様への捧げものとして神聖なものとされ、古来よりケガレを払うものとして
重宝された麻を熨斗にしました。
贈る目的に応じた結びにて、赤白の水引でTIERがひとつひとつ想いを込めて形にします。
本来の意味を大切に見直し、形にしたご祝儀袋です。
大切な方へ、相手を想い丁寧にお渡ししたいときにぜひお使いください。
モノ作りをするにあたって、要素を切り取って単に取り付けるのはとても簡単なことです。
真逆に時間をかけて、ひとつずつの価値を大切に高めながら作ったこのご祝儀袋。
自信を持ってお届けいたします。
最後に、本来であればもっと高い価格になる商品ですが、
みなさまのご協力をいただき無事にできました。
本当にありがとうございました。
只今、TIERのオンラインショップ(TIER (stores.jp)にてご予約受付中です。
2月21日(火)より順次発送いたします。
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和紙職人/谷野裕子
国の重要文化財、ユネスコ無形文化遺産に登録されている
「細川紙」の技術保持者、伝統工芸士。
和紙作りの指導や講演、他産地や海外でも技術指導を行う。
書道家/中村ふく
アートとしての書道の魅力と可能性を幅広い層へ伝えるべく、
プロダクトなどの題字を多く手がけ、書道アーティストとして活動している。
水引職人/長浦ちえ
水引デザイナー、水引文化研究家。伝統を踏まえ現代の解釈を交えながら
水引を現代の生活に落とし込んだプロダクトをデザインしている。
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